ミニマル国の人々③
- the other one
- 2016年11月14日
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ミニマリストとしてDR.DREを紹介したからには、もう一人の偉大なるワンループ・アーティスト、DJプレミアを挙げなければならない。
ヒップホップ・ファンならずとも世界に名前が轟く超大御所である。彼こそ、ヒップホップ界におけるミニマル・ミュージックの伝道士だろうと思う。
彼はサンプリングしたネタをそのまま使うような野暮なことは一切しない。
サンプリングされたネタはバラバラに解体され、細分化したうえで再構築するチョップ&フリップという手法を開発した功労者でもある。今では当たり前になったこの手法はプレミアが最初だといわれている。
細分化された彼のトラックは所々スタッカート気味に聴こえる。それがまた唯一無二の独特なグルーヴを生み出す。彼特有の硬質なドラムビート、声ネタのスクラッチが加われば鬼に金棒、これぞヒップホップという世界が目の前に現れるのである。
古今東西、ワンループ・アーティストは数多いるが、彼ほどワンループに固執し、成功した人はいないのではないか。浮き沈みの激しいヒップホップ業界の中、20年以上同じ技法で、第一線に君臨していることは驚愕に値する。
プレミアの音は今も昔もプレミアでしかないのに、いつ聴いても飽きることがない。
それはもう殆どAC/DCの領域である。いつでも新鮮なプレミア印の金太郎飴。
プレミア・ビートという麻薬。彼はその存在自体がミニマルなのだと思う。
プレミアの最高傑作と問われれば、多くのファンが悩むだろう。Hard to earnだという人もいれば、ダマジャやグループホームなどのプロデュース諸作品を挙げる人もいるかもしれない。それだけクラシックを量産してきた証である。
ここで筆者が紹介したいのは、GANGSTARRのdaily operationである。このアルバムはプレミアがまだプレミア印のビートに移行する直前の作品だといえる。荒削りだがソリッドなアルバムだ。最小限に制御され、先鋭化した音の反復そのもののである。

まさにミニマル・ミュージック。イントロから前衛的ともいえるミニマル手法がいかんなく発揮されている。ミニマルヒップホップの金字塔だろうと思う。
DREのギラギラしたミニマルビートとは相反的なザラザラとした質感のトラック群だが、手法こそ違えど両者は、ミニマル国を代表する巨人たちなのである。
Gang Starr - B.Y.S. Instrumental
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