ミニマル国の人々⑤
- the other one
- 2017年3月12日
- 読了時間: 3分
「最近のテクノはミニマルばかりでつまらない」 これはU.K.のベテランテクノDJであるルーク・スレーターが近年のインタビューで語っていた言葉だ。彼は更にこう続ける。
「自分が作る音楽はいつだってファンクだと思っている」 彼の意見は筆者にとって溜飲が下がる思いとともに、矛盾のようなものも感じた。 何故なら筆者の個人的な見解は、良質なファンクやテクノは大概がミニマル国の住人だと思っているからだ。ミニマル・ミュージックがつまらない訳ではない。ようは曲の良し悪しなのだ。
たしかに最近のテクノはつまらない。単調で面白くないものが多い。たまにイベントなどで大物テクノDJのプレイを観ることがあるが、酷いものだ。極端に音数が少ないビートが延々と繰り返されるだけ。これでは味気ないし、退屈なだけである。真のミニマルは先鋭化した音が繰り返されることによって恍惚感が生まれるのだから、余程音にこだわらなくてはならない。ループするフレーズ、素材、一音一音が大事になってくる。
ミニマル・ミュージックが劣化した要因の一つはPCにあると思っている。今や、PCの中だけで初志貫徹できてしまう時代になってしまったからだ。ループやテンポの調整などクリック一つで出来てしまう。シーケンサーもサンプラーもエフェクトも全てPC一台あれば簡単に出来てしまうのだ。よって同じような音が世の中に氾濫する事態が起こってしまった。凡庸なミニマル・ミュージックが手軽にリリースされているのが現状だ。
ここで冒頭のルークスレーターの話に戻そう。彼が97年に発表したミニマルテクノの名盤「FREEK FUNK」という、その名もずばりなアルバムがある。 彼は20年前からミニマルはファンク(ファンクはミニマル)だと思っていたのだから、考え方が先進的だ。ぶれてない。こういうミュージシャンは信用できる。
このアルバムは一曲目から素晴らしい。いや、一曲目が最強のミニマル曲なのである。一小節の中に8分と4分のバスドラが配置されたシンプルなビートに裏でシンセが鳴っているだけの構成なのだが、飽きることがない。それどころか、おそろしく頭が振れる。
この曲は8分と4分のビートを一塊にしたことで最強のミニマル・ミュージックになった。ロックのビートとテクノやジャズの4ビートを一緒にしてしまったのだから、単音のバスドラだけという機械的でシンプルなミニマルビートでも有機的なグルーヴを生み出すことができた。そこに裏でシンセが鳴る訳だから、ロック、テクノ、ジャズに、スカの要素がこのシンプルな構成にすべて入っているのである。 この曲こそ、ミニマルテクノの金字塔的なサウンドだと思う。
Luke Slater: Purely

Comments