ミニマル国の人々①
- the other one
- 2016年11月2日
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作家の有栖川有栖が、日経新聞で「ミステリー国の人々」というタイトルのエッセイを連載をしている。毎回ミステリーに関わる人達を、様々なジャンルの小説から紹介する楽しいエッセイだ。
ある時、これは音楽のジャンルにも応用できる、パクれる(サンプリングできる)と思った。テーマはすぐに決まった。ミニマル・ミュージックである。電子音楽をやっていると、否応なく出てくる単語、ミニマル。一般に「最小限に抑制され、先鋭化された音の反復」と定義されている音楽だ。この音楽の幅は広い。花村萬月と綾辻行人を同じ定義で語るミステリーと同じくらい広い。
ミニマルといえばスティーヴ・ライヒであり、日本でいえば坂本龍一や久石譲などが挙げられる。高尚な現代音楽というイメージが強い。だが、シンセサイザーやシーケンサー、サンプラーの発達、普及で、ミニマルミュージックはテクノやハウス、ヒップホップなどへと伝達してクラブミュージックに浸透していくことになる。
ミニマル。これをループ・ミュージックやリフという言葉に転換すると、やたらと親しみのあるものになる。たとえばファンクなんて音楽は先鋭化された音の反復そのもののように思えるし、ギターのリフで構成されているロックだってミニマルといえばミニマルなのである。現代の音楽はフレーズの反復によって成り立っていることに気づく。
と、なると、リフロックの王様であるAC/DCはロックというよりは、ミニマル・ミュージックとカテゴライズされてもおかしくないのではないか。金太郎飴のように反復されるギターフレーズ、装飾を極力廃したシンプルなドラム、基本ワンループで構成されている。ギターソロとボーカルを消せば、まさにミニマル・ミュージックなのだ。
80年代、このことに気づいた人達がいる。KRS-1率いるブギーダウンプロダクションズである。1987年に発表された彼らのファーストアルバムに収録されているドープビーツという曲で、AC/DCの超名曲バックインブラック(死ぬほどカッコいい)がサンプリングされたのだ。AC/DCがミニマルなバンドだと証明された訳である。ヒップホップ、ブレイクビーツとして再構築されたというよりは、AC/DCというバンド自体がミニマル・ミュージックそのものだったのである。
いやいや。ちょっと待て、ランDMCとエアロスミスが共演した、さんま御殿のあの曲はどうなんだ、エアロスミスもミニマルなのか、バードロックバンドはみんなミニマルなのか!と有識者の方々に言われちゃいそうなので、それは後日綴ろうと思う。
*このブログは筆者の完全なる主観と思いつきで綴っております。


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